第六回『たのしいな俳句』
- 2021.03.31
- 表現学部 一階教室
みなさんこんにちは。
『俳句大学 表現学部』の第六回講義です。
これまでの講義で「わたしの気持ちを俳句にするには?」どうしたら良いか、概ねやり方を把握できたかと思います。
この最終回では、方法論を離れていよいよ実践に踏み込みます。
……とは言え、「これまでの内容を読んで一句作りましょう」といきなり言われても、どう手を付けて良いものやら悩んでしまうと思います。
そこで、理論を簡単に実践できるツールを紹介します。
それが『たのしいな俳句』です。
考案者は俳人の夏井いつき先生。
「俳句の種蒔き」運動を提唱して、普及活動に尽力している俳壇の代表者のひとりです。
当サイトで『たのしいな俳句』を紹介する許諾を頂いております。
著書も多数ありますので、興味を持った人はぜひリンクを辿ってみてください。
https://www.natsui-company.com/
では、さっそく『たのしいな俳句』の使い方を紹介していきましょう。
第一ステップ
今回は「たのしい」という気持ちを俳句にしてみます。
まず、俳句の十七音を、上五・中七・下五に分解してください。
そして、下五の部分を「たのしいな」という感情表現に置き換えます。
図解すると――
となります。
ここまでが第一ステップです。
第二ステップ
つぎに、上五~中七までの十二音の部分で、楽しい情景や場面の一節を作ります。
名詞でとめても動詞をつなげても構いません。
内容も自由ですが、季語だけは含まないでください。
ためしに筆者の作った例句を当てはめてみましょう。
こんな形になります。
ここまでが第二ステップですが、この段階で読者のなかには「俳句に気持ちを表す言葉は書き入れないのでは?」と疑問に思う向きもあるかもしれません。
はい、その通りです。
俳句に心情の言葉は必要ありません。
そこで「たのしいな」の部分を変更する第三ステップへ移ります。
第三ステップ
第三ステップでは、「たのしいな」の部分を「五音の季語」に変えます。
心の動きをここで季語に託すわけです。
今回はたのしい気持ちを託す季語ですので、季節が春なら、
「春の空」
「春日和」
「風光る」
「初桜」
などが挙げられます。
歳時記を開けば、他にもたくさんの「五音の季語」があるはずですので、いくつかピックアップして、順番に当てはめてみましょう。
最終的に「これでいいのか?」と悩んだら、季語の本意を意識する場面!
選んだ季語の本意が表現したいこととマッチしているか、歳時記の解説と例句をよく見比べてください。
自分で一番しっくりくると思った季語に置き換えたら、一句の完成です。
さきほどの例句の場合だと、こんな感じになります。
・ 日帰りの観音崎は春の夕 豊島月舟斎
……あっという間に日が暮れてゆく、楽しい小旅行の映像が出来上がりました。
『たのしいな俳句』まとめ
基本的な使い方は以上ですが、下五を「さびしいな」「きれいだな」などべつの気持ちにして、それぞれ表現練習をしても良いでしょう。
心情を季語に託すプロセスが直感的に把握できます。
筆者の知る限り、これ以上シンプルな表現方法の練習ツールは他に存在しません。
作れる俳句には限界がありますが、はっきりとした段取りがあって、かつ定理に裏打ちされた『たのしいな俳句』は、初心者にうってつけと言っても過言ではないでしょう。
ぜひ、パターンを変えて何句か詠んでみることをお勧めします。
一階教室の全講義を終えて
さて、全六回にわたって解説した『俳句大学 表現学部』一階教室の講義は、これでひと区切りとなります。
いかがでしたか?
役に立ったと思う人は、コメントを返してもらえると励みになります。
また、『作り方学部』『文法学部』をまだ読んでいない人は、あわせて一読することをお勧めします。
さらに詳しい表現方法を知りたいと思ったら、『表現学部 二階教室』へ進んでください。
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