第二回『これが俳句の切れ 一撃技と合体技』

第二回『これが俳句の切れ 一撃技と合体技』
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みなさんこんにちは。
『俳句大学 文法学部』の第二回講義です。

俳句の構造「ことばの音数」と「俳句の切れ」の後編です。
ここからの二回は、切れと切れ字について説明していきます。

「俳句の切れ」ってなんのこと?

いきなり「切れ」と言われても、初めて耳にした人はピンと来ないのではないでしょうか。
どんな切れ目のことか対象が示されていないせいで、あまりにも漠然としているからです。

いったいなんの切れ目を指しているのでしょうか?

 

あえて省略されている言葉を文字にすると、

「文脈の切れ目」
「文意の切れ目」

のような意味になります。

「切れてる」俳句、「切れてない」俳句

具体的に見てみましょう。
次のふたつの例句を比較してみてください。

 ・ 朝献のひとつ右向く蒸鰈  豊島月舟斎
 ・ 金閣に次の千年初桜    同上

俳句の内容以前に、両者には文法上の決定的な違いが存在します。
それが「俳句の切れ」の数です。

第一句は全体でひとつのまとまった文節になっています。
文脈や文意の切れ目は、句末にしかありません。
これに対し、第二句は中七と下五のあいだにも切れ目が存在しています。

特徴を見やすくするため、カナにひらいて、さらに五・七・五へと分解してみます。

 

こうすると、どこに切れがあるのか認識しやすくなったと思います。
下の句だけが、「金閣に次の千年」と「初桜」のふたつのパーツで構成されています。
この切れ目のことを「俳句の切れ」と称しているわけです。

RPG風に言い換えるなら、上の句は一撃技、下の句は合体技となるでしょうか。

例句は体言止め(名詞の言い切り)のパターンでしたが、用言(動詞、形容詞、形容動詞)の終止形など、文節が区切れている部分はすべて「俳句の切れ」に当たります。

一撃技と合体技

俳句は五・七・五のあいだを開けずに一行で表記しますので、一見どれもひとつの文章のように見えます。
けれど、じつは文脈や文意が途中で「切れ」ていることが往々にしてあります。
俳句は「どこに切れがあるか」を意識しておくと、とても分かりやすくなるわけです。

ちなみに、句末まで切れのない一撃技のことを一句一章、句の途中で切れている合体技のことを二句一章と呼びます。
三句一章の名句もあるにはありますが、例外中の例外と思って良いでしょう。

「俳句の切れ」とは何か、イメージをつかめましたでしょうか?

 

次回は、切れを直接書き表す符号「切れ字」について説明します。
内容が繋がっていますので、できるだけ本項と合わせて読むことをお勧めします。