第五回『マル秘 季語のお買い得情報』

第五回『マル秘 季語のお買い得情報』
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みなさんこんにちは。
『俳句大学 表現学部』の第五回講義です。

前回の講義では、
「気持ちを託すのに最適な季語を選ぼう」
という目的で実例を確認しました。

そのなかで、選択に悩んだときは、『季語の本意』を意識すると良いという話をしました。
そこで今回、季語の本意とはどんなもので、なぜ得するのかについて、詳しく説明したいと思います。

どっちの季語を買えばいいの!?

前回の例句では、新緑と荒梅雨というふたつの季語を比較しました。
この両者は明らかに性質が違いますので、初心者でも容易にイメージをつかむことができたと思います。

では、ここで問題です。
もし早春と春浅しのふたつだったらどうでしょうか?

 

両者とも立春間もないころを表す春の季語。
音数以外に内容的な違いはありません。
どちらかひとつを選ぼうとすると、判断に迷いませんか?

 

……このように本質の違いが分かり難い季語は、結構たくさん存在します。
また、自分では知っているつもりでも、じつは意味の異なる言葉もあるものです。
そうした季語に遭遇した場合、判断の指針がなければ選択のしようがありませんよね。

そこで役立つのが、季語の本意です。

季語の本意ってなに?

「そんなの歳時記に書いてないですが……?」
と思われるかもしれませんが、季語選びにおいて大変重要な指針です。

季語の本意とは、ある季語が無数に詠まれるうちに定着した、言葉の概念の素粒子と言うべきもの。
俳句の達人になってようやくつかむことができる、辞書にも載っていない究極の意味だと思ってください。

 

当然ですが、自分の力で同じ境地に至ろうと思ったら、途方もない時間と研究が必要になります。
その点、あらかじめ達人がつかんだ本意だけを把握しておけば、経験値をそのまま借り受けられます。

これが、季語を選ぶときに本意を意識しておいた方が良い理由です。

『俳句大学』は「誰でも気軽に俳句を楽しむ」のが目的ですから、「借りパク」を強くお勧めします。

お買い得情報を知っていると……

ためしに、前出の問題を振り返ってみましょう。
筆者なら、「早春」はきらめきや透明感といった視覚的イメージで使いますし、一方の「春浅し」は時間軸にシフトして未だ春らしさが薄い意味合いを出したいときに用います。

これが季語の本意を意識する具体的なメリットです。

意識して例句や解説を調べるのと、そうでないのとでは、大きな差のつく理由が感じられましたでしょうか?

 

引用:NHK俳句 夏井いつきの季語道場©NHK出版

季語の本意まとめ

まとめると――

「わたしの気持ち」を託す季語を選ぶときには、まず本意を意識して歳時記を読むことをお勧めします。
どうしても本意がつかみにくい場合は、この機会に専門書を手にとってみることも検討しましょう。

『俳句大学 表現方法編』も次で最後となります。
次回はハンズオンセミナーです。